岩本町の文字

中央区 2009年

 岩本町駅を出て、神田川の手前を左に入ると、衣料品の問屋の立ち並ぶ通りとなります。かつてこのあたりは、明治初期より古着や既製服の問屋街として栄えたそう。七〇年代〜九〇年代に建てられたと思しきビル群にまじって、タイル葺き、銅板葺きの看板建築の一群が見える。
 「海老原商店」さんは、昭和三年築の衣料品店。ぐっと力の入った楷書と、軽やかなサンセリフの欧文との組み合わせが、伝統と流行を同時に兼ね備えた取扱品目を想起させます。
 さらに進んでゆくと、これはまた見事な銅板葺きの看板建築の「岡昌裏地ボタン店」さん。こちらは明治三〇年創業とか。堂々とした明朝体が、質実剛健の品揃えを物語るようです。
 この日は友人と小川町の球戯場「淡路亭」さんでビリヤード。伝統と風格。台の横にプリントされたカッパープレートゴシックが、使い込まれた撞球台によく似合っていました。
 ふと窓の外を見ると、総武線と中央線が交差するシーンに遭遇。(慌ててシャッターを切ったため、ピントが……。)
 いい文字との出会いもあって、この日の勝負は勝てました。

○海老原商店/岡昌裏地ボタン店
※現在は修復改修され、ギャラリーとして営業されているそうです

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